特別企画 一人ひとりのひのきしん 私にできるひのきしん④

お下がりを共に頂く「こども食堂」粕屋宗像支部・竜仲原分

 福岡市の東部、都心部へのアクセスに便利なベッドタウンとして発展する粕屋郡宇美町。竜仲原分教会(岩﨑大治郎会長)は、住宅街が広がる丘陵地が面する県道沿いにある。
 「ただいま!」「お邪魔しまーす!」。午後3時すぎ、元気な声とともに、岩﨑会長の長男・颯治郎くんと同級生数人が入ってきた。教会の玄関には、会長夫人の孝江さんが手書きしたウェルカムボードが立てられている。この日(10月2日)は、教会で月1回開催している「こども食堂」の日。食堂のオープンは午後6時だが、下校した子供たちが数時間前から教会へ来て、宿題をしたり遊んだり、参拝場や教会近辺で思い思いの時間を過ごすのが馴染みの光景となっている。
 教会では以前から地域のママ友と子供たちを集めて、お花見会や七夕会などを催してきた。本格的に「こども食堂」の取り組みを始めたのは昨年春。毎回30人、多い時は50人以上の子供や保護者が教会で夕食を共にしている。
 参加費は子供200円、大人300円。「材料のほとんどは教会のお下がりなので無料でいいのですが、保護者から『少額でもお金を取ってもらったほうが、気兼ねなく参加できる』と言われ、今の金額に落ち着いた」と岩﨑会長。
 この日のメニューは、チキンカツカレーとサラダ。50人分ともなると具材は大量だが、下準備のひのきしんを信者さんの一人が引き受けてくれたという。「こども食堂を始めてから、信者さんや支部内の教会からお米や野菜の差し入れをたくさん頂くようになり、助かっています」と孝江さん。
 オープンの6時を前に続々と参加者が集まり、玄関には所狭しと子供たちの靴が並んだ。大鍋が参拝場へ運ばれ、孝江さんが「みんな、お待たせー!」と声をかけると、鍋の前には子供たちの長い列ができた。
 当初から親子で参加している40代の女性は「育ち盛りの子を持つ親として、たとえ1食分でも食事を作る手間が省けるありがたさを感じる。共働きや一人親の家庭も少なくないので、皆さん助かっていると思う。教会の雰囲気も和やかで、親子共々この日を楽しみにしています」と笑顔で話した。
 新型コロナウイルスの流行に伴い、今年3月から5月にかけては休止を余儀なくされたが、周囲から再開を望む声を多く受け、緊急事態宣言解除後の6月から再開。その間にテイクアウト弁当の提供も始め、仕事で帰りが遅くなる家庭や一人暮らしの高齢者にも喜ばれているという。
 岩﨑会長は「コロナの影響で表立った布教活動ができない中でも、ひのきしんの心で食事を作り、共に神様のお下がりを頂くことで、少しでもお道の雰囲気を味わってもらいたい」と話している。